教会で歌われる讃美歌には、皆様もよくご存じの曲があります。
それは外国の民謡であったり、オペラの曲であったり。
今日はそのような曲を何曲か紹介したいと思います。
さて、最初の曲は「春の日の花と輝く」です。これはアイルランドの歌曲「僕は君を変わらず愛し続けるだろう」というもので、アイルランドの国民的詩人トマス・ムーアによる熱烈な愛の歌を、堀内敬三が日本の四季の美しさと、恋する思いを重ね訳しました。
トマス・ムーアは「庭の千草」なども手掛けています。
この讃美歌は「世界で最も知られ、最も広く用いられているこどもの讃美歌」“主われを愛す”です。
「こどもたちを愛するイエス様のお姿と、天国はこどもたちのものである」ことを歌っています。
次はイングランド民謡の「埴生の宿」です。原題はHome!Sweet Home!「楽しき我が家」です。
イタリア民謡から着想を得たイギリスのヘンリー・ビショップの作曲、アメリカのジョン・ハワード・ペインの作詞です。日本語の歌詞は「庭の千草」や「アニーローリー」などを手掛けた里見ただしです。
この曲は1889年12月東京音楽学校が出版した「中等唱歌集」に収蔵されました。
太平洋戦争勃発に伴い、洋楽レコードが「敵性レコード」として廃棄が呼びかけられる中でも、歌詞を邦訳した「埴生の宿」や「庭の千草」などは国民生活になじんでいるということで「敵性レコード」から外されたということです。
2006年には日本の歌百選のひとつに選ばれています。
映画、ドラマでも使われていますが、例として「木下恵介版の二十四の瞳」「ビルマの竪琴」「火垂るの墓」「ゲゲゲの女房」など。また駅の到着放送などに放送されたりもしています。
その中でも印象深いのは「ビルマの竪琴」で日本兵が「埴生の宿」を歌い、それを聞いたイギリス兵の心が動き、イギリス兵は同じメロディーの「Home!Sweet Home!」を歌い、戦いが止まったという有名なシーンが思い出されます。
肝心な「埴生の宿」とはいったいどんな意味なのでしょう?
ご存知の方もおありでしょうが、床も畳もなく、土むき出しのままの家のことだそうです。
そんな家だけれども、育った家というものは、玉の装いを凝らし、瑠璃の床を持った殿堂よりずっと楽しく、また頼もしい、という歌です。
讃美歌2編147番です。この讃美歌は「きよしこの夜」を訳した日本の牧師であり、代表的な讃美歌作家である由木康が訳しました。ホームとはこの世の家だけでなく、魂のふるさと、天国をも現しています。
最後に紹介しますのは讃美歌285「主よ御手もて」です。
原曲はウェーバー作曲のオペラ「魔弾の射手」序曲です。わたしも「魔弾の射手」という名前は知っていても、観たことがないものですから、非常に興味があります。今回のことでちょっとインターネット調べたら、なんでも「怪談」をもとにしているとのことです。ますます興味がわいてきました。
さて、この讃美歌の作詞をしたのはスコットランドの牧師ボナーです。
「主よ、わたしの選ぶ道ではなく」という書き出しに始まります。
およそ悩みというのは、願望が増長される時に起こります。主の道ではなく、自分の道を突き進もうとしていると、必ずガツンと打ち砕かれるのです。そして、この讃美歌を歌いながら、再び「主よ、私の選ぶ道ではなく、あなたの道を行かせてください」という気持ちにさせられると、不思議と「神様がしてくださる」という希望が湧いて来て、再び元気が出てくるのです。
ちなみに、日本の童謡で、「秋の夜半」という曲がこのメロディーです。1910年中学唱歌として発表されました。ご存知の方いらっしゃるでしょうか?歌詞は
秋の夜半の み空澄みて
月の光 清く白く
雁の群れの 近く来るよ
一つ二つ 五つ七つ
まだまだあると思います。時にはこんなふうに讃美歌のルーツを調べてみるのも楽しいものです。(R. H.)