青森松原教会ホームページ

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17日

認知症の父の心に寄り添いたい

認知症の人は新しいことを記憶できなくなります。認知症が重くなるにつれ、それまでできていた操作もできなくなります。ストーブのつけ方消し方、湯沸かし器の操作、やがてテレビや天井灯のリモコンの使い方もわからなくなります。食べたこと、様々なできごとがあったことを忘れてしまいます。

でも、忘れるからといって、どんな対応をしてもよいのではありません。なぜなら、感情は忘れずに残るからです。それも、認知症になる前より、ずっと鮮明に・・・。たぶん、自分でも不安でいっぱいなので、自分に対する否定的な言葉にずっと敏感に反応して、心が深く傷つき刻まれるのでしょう。傷つけられた言葉や出来事自体は忘れてしまっても、傷ついた感情は残り、現に本人の目の前にあって長く尾を引きます。そんなことを認知症の父から、また家族会のお話から学びました。そんな認知症の父の心に寄り添っていきたいと思っていました。できなくなることは増えるけど、なるべく日々を楽しんでもらいたいと・・・。

感情は残るなら楽しい気持ちも長引くのではと思い、父は野山の花や紅葉の写真を撮るのが好きだったので、春には浅虫の湯の島や梵珠山麓へ、秋には八甲田山周辺へ、父と出かけました。ただ、花や紅葉を見ている最中はとても喜ぶのですが、帰りの車中では楽しんだことをもう忘れてしまい、疲れて不機嫌になるのです。どうも期待したほど楽しんだ感情は残らないのかなと思いました。でも、父が撮った写真を大きな紙に貼って、どこでいつ撮ったのかも大きな字で書いて、父の部屋の壁に貼ったところ、父がとても喜ぶようになりました。目の前で見えると、その都度、楽しいことを追体験できるのかもしれません。

とはいえ、私もいつも初心を守り続けられたわけではありません。ずっと一緒に居て同じことを繰り返されると、イラついた対応をしてしまう時もありました。

そのたびに”父の心に寄り添いたい”と心に言い聞かせる・・・そんなことの繰り返しでした。

(ペンネーム:すぬこ)こと(S.K.)