ある日、一通の手紙が届いた。届いた時、とても戸惑った。
たどたどしい字で群馬県高崎市の住所、名前はソ○ターニー・ゴ○ーム・レ○ーとあった。住所にも外国名の差出人にも全く覚えがなかった。
手紙を前にし、“ハッピーをもたらす手紙?それともアンハピー?”と思案しながら、ハッと思い出したことがあった。
その手紙が届く前、千葉のカトリック教会員である友だちから、手紙と資料を添えて一人のイラン人を支援するための募金依頼があった、それに応答したことを。封を開けたら、やはりそのイラン人からのお礼の手紙だった。
友だちによると、その方ゴ○ームさんは難民(日本政府は認定していないが)としての不法滞在者で仮放免になっているのだが、生活に困り支援が必要だという。
不法滞在者の管轄は法務省出入国管理庁で、不法滞在者は茨城県牛久市と長崎県大村市にある出入国管理センターか、国内に数カ所ある収容施設に入れられる。
千葉の友だちの教会の神父さまは87歳のアイルランド人で、一ヶ月に一度、定期的に牛久の出入国管理センターに通い、収容されている方たちの話しを聴き、支援物質を届けることをされている。友だちも時々一緒にお伴しているよう。
不法滞在者には様々な背景があるが、難民であろうと、すでに家族もあり何十年と日本に暮らし続けている人であろうと、法に則った滞在許可のない者は摘発の対象となる。日本政府の方針は一日も早く送還したい。そのためにセンター・施設での待遇が悪ければ、帰る気になるだろうという理由もあり、ひどい待遇、暴力行為が行われているという報道もある。
イランの正式名称は「イラン・イスラム共和国」で、国民のほとんどはイスラム教だが、ゴ○ームさんは、カトリック信者。本国で反政府運動に加わっていたということで、身に危険が及び逃れてきたそうだ。帰国すれば殺される。難民認定がされない場合、センター・施設に収容されるか、施設に入らない仮放免となる。仮放免となっても仕事につくことは禁止、居住県外への外出禁止の制約があり、破るとまた収容される。収容されても、仮放免でも日々の暮らしは厳し過ぎる現実。
今年、3月9日のNHK BS・世界のドキュメントで、『ナスリン 闘う女性弁護士』が放映された。ゴ○ームさんの国イランで、人権活動家で弁護士をしているナスリンさんという女性。度々投獄され、現在の刑は禁錮38年、鞭打ち148回。国内はもとより米国、ヨーロッパでナスリンさん救済の抗議デモや集会をしていることも伝えられた。
キリスト教会では、今年は2月17日〜4月3日まで受難節で、翌日4日が復活日。イエスさまが磔刑にされ息を引き取られるまでの日々を思い、3日目に復活されたことを祝う時。
私たちが知らないだけで、世界には闇が深い国で、イエスさまのお苦しみ、鞭打たれ、罵られ、命を奪われる出来事を体験されている人々が、イランだけではなく、いっぱいいることを知らされる。そのような中で、自分にできる小さなことをしていきたいと願っている。(S.K.)