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子ゾウのきもち

子ゾウのきもち

旅先の本屋さんでのこと。
平積みの本のほうから “手にとってみて” とでも言うように、目に飛び込んできた本があった。
『いわずにおれない』と題した私の大好きな、まど・みちおさんの小さな本だった。
ピーナツの殻をもっと明るくしたような表紙の色。
まどさんが頬杖をついているイラストが描かれている。
谷川俊太郎さんの〈こんなにやさしい言葉で、こんなに少ない言葉で、こんなに深いことを書く詩人は、世界で、まどさんただ一人だ〉と書かれた帯がついている。
2005年に一刷だから、10年以上前に出版されていたもの。
知らなかった…という思いで買った。

 まどさんのことは、歌ってみたら、誰もが身近に感じることでしょう。         
「ぞうさん」「一ねんせいになったら」「やぎさんゆうびん」等。
多くの詩と、歌を遺して、2014年に104歳で逝去されました。
買った本は編集者の問いに、まどさんが応えるという形で山口弁の語り口で書かれていて、下記のような部分【 】があります。

【そもそも詩というのは、10人読んだら10人違う感想をもつものでね。
その人が感じたいように感じてもらうのが一番いいと私は思っておるんです。
だから、この詩はこういうふうに読んで欲しいっちゅうことは、それをつくった私にも言えないんですよ。
ただ、その詩がどういうふうに読まれたがっているかということはあります。
たとえば「ぞうさん」でしたら、〈ぞうさん/ぞうさん/おはなが ながいのね〉と言われた子ゾウは、からかいや悪口と受け取るのが当然ではないかと思うんです。
この世の中にあんな鼻の長い生きものはほかにいませんから。
顔の四角い人ばかりの中に一人だけ丸い人がおったら、本来はなんでもない「丸い」ちゅう言葉が違う意味をもってしまう。
われわれ情けない人間だったら、きっと「おまえはヘンだ」と言われたように感じるでしょう。
ところが、子ゾウはほめられたつもりで、うれしくてたまらないというふうに〈そうよ/かあさんも ながいのよ〉と答える。
それは、自分が長い鼻をもったゾウであることを、かねがね誇りに思っていたからなんです。
小さい子にとって、お母さんは世界じゅう、いや地球上で一番。大好きなお母さんに似ている自分も素晴らしいんだと、ごく自然に感じている。
つまり、あの詩は、「ゾウに生まれてうれしいゾウの歌」と思われたがっとるんですよ】

この原稿を書いている私は、市営バスの『いき・粋 乗車証』を所有する年齢。
子どもの頃からのチビ。
小学校担任の女の先生が、私に“豆さっちゃん”というニックネームをつけました。
とても可愛がって貰っていたので、悪気ではなかったと思いますが、先生にも友だちにも呼ばれると、内心は嫌でした。
私が子ゾウと同じこころを持っていたら “豆さっちゃん” と呼ばれることに大きな喜びを感じていただろうと思います。
私は子ゾウではなかったけれど、大人になった今、ほんのちょっとでも、そのようなこころを持ちたいと願っています。
それは、イエスさまがおっしゃる、「子供のようにならなければ(マタイ18章3節)」のみことばに重なることでもあると思っていますから。(S.K.)

 

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