青森松原教会ホームページ

青森松原教会は132年の歴史を持つ、キリスト教の教会です。

TEL:017-776-4800

 FAX:017-723-6809

〒030-0813 青森市松原1-16-27

『白愁のとき』に見まわれて

『白愁のとき』に見まわれて

夏樹静子氏の『白愁のとき』を本棚に見出して読んで見ました。以前に「白愁」という言葉を説明した記事を思い出し、自分の日常生活に心を寄せたりしながら……。白愁=人生の秋。30代、40代の時の如く仕事に合わせる能力が身心共に衰えて来る時季。女の更年期、男にも更年期あり等(など)いう。語源は確か中国で、人生の年月を季節に例えて分別し、それに色をあてはめてる。

① 青春=若さいっぱいの20才前後。石坂洋次郎の「青い山脈」がピッタリだと思う。

② 朱夏=人生の真っ只中。25才~45才。男盛り、女盛りと言われる。

③ 玄冬=(玄)は奥深くて光の及ばない所の色。黒。天の色。

小説の荒筋は省略します。主人公は52才の優秀な造園業を営む男性。叔母がアルツハイマー症に犯されて若死した事もあって、近頃の自分が頻繁におそわれる物忘れ、不眠症、仕事のミス等に一喜一憂の日々に喘いでいます。その様子が縷々画かれて居ます。精神科医を友人に持って居るので良く訪ねては苦悶を訴えています。

私にも彼に似た症状が50年前から生じました。呑気に構えては居ますが、TVを見ていて困る事があるのです。「この話はちゃんと聞きたいな。」と耳を傾けた途端に場面が移って字幕が消えてしまうことです。「こんな時に必ず思い出すのが、20代の事です。学校の体操場での映写会でナレーターをやっていたことです。画面が新しくなった瞬間、全面的映に写場面も字幕も頭に焼きつき、役目を完全に果たす事がきたのです。昔の話を持ち出してもどうにもならないと諦めるばかりですが・・・・・

この小説には次の終末分野があって私を救ってくれました。神からの恵みだと感謝いっぱいです。

◎「みんな、のべつ物忘れしながら生きているのだと彼は急におかしくなった。(中略)第一凡ては疑いでしかないのだ。」

◎「凡ての物は移ろい、移ろいながら永続して行く時の景なのだ。と考えよう。この爽秋の果てない大気の中に身も心も魂も溶けて行く。永遠と一体になるのだ。」彼は秒を刻む腕時計を空高く放り出して小説は終わりました。

そして私も「白愁」という美しい言葉の裏に潜む恐い物の存在を暫し遠のけて、穏やかな一つの別れを致しました。

神様ありがとうございました。

(K.N)

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です